マッチングサービスのビジネスモデルには、ビジネスや恋愛・結婚のほかにもさまざまな種類があります。「人と人」だけでなく、レンタルスペースやフリマサイトなど「人と物」をマッチングさせるサービスも含み、その市場規模は年々拡大しているのが特徴です。
本記事では、マッチングサービスのビジネスモデルについて詳しく解説します。種類や収益を得る方法から、これから始めるにあたって押さえておきたい成功させるためのポイントまで幅広くご紹介します。
マッチングサービスのビジネスモデルとは?

マッチングサービスのビジネスモデルは、ユーザーのニーズに合わせて「ユーザー同士」もしくは「ユーザーと物」を結びつけて、その対価として収益を得る仕組みです。
収益を得る相手やタイミングは、マッチングサービスの内容によって異なります。サービスの目的を定め、利用してほしいターゲット層やユーザーニーズを具体的にイメージすることで、効果的なビジネスモデルを作れるでしょう。
マッチングサービスの種類
マッチングサービスは、何を対象にするかによって種類が異なります。以下より「ビジネス領域」と「普段の生活で使える」サービスに分けて、それぞれ解説します。
ビジネス領域のマッチングサービス
ビジネス領域における主なマッチングサービスを4つ紹介します。
専門スキルを持つ個人と、業務を外注したい企業をつなぐサービスです。代表的なサービスは以下のとおりです。
- クラウドワークス:国内最大級。ライティング、デザイン、開発など幅広い案件を掲載。
- ランサーズ:システム開発やデザインなど専門性が高い案件が充実。
- ココナラ:スキルを「サービス」として出品可能。副業層にも人気。
- シューマツワーカー:週10時間から稼働可能。副業を続けながらできるリモート案件が多い。
フリーランスマッチングサービスを活用することで、企業は柔軟かつ効率的に外部人材を活用でき、フリーランスや副業希望者は自らのスキルを最大限に発揮できます。
企業の採用ニーズと、転職・就職を希望する人材を結びつけるサービスです。近年は、AIによるスカウト機能や、価値観を重視したマッチングなど、従来の求人媒体とは異なるアプローチが広がっています。
代表的なサービスは以下のとおりです。
- Wantedly(ウォンテッドリー):企業の理念やビジョンなどへの共感を重視する、ビジネスSNS型採用プラットフォーム。
- BizReach(ビズリーチ):即戦力となるハイクラス人材に特化。企業が求人条件に合う求職者に直接スカウトを送る。
- Green(グリーン):IT・Web業界の経験者採用に特化。登録者の半数以上がエンジニアやクリエイター。
- doda X(デューダエックス):年収600万円以上のハイクラス転職サービス。ハイクラス・ミドルクラス層向け。
企業は自社に合った人材を効率的に採用でき、求職者も自身の価値観やスキルにマッチする企業と出会うことが可能になります。
企業同士をつなぎ、新たなビジネスの機会を創出するサービスです。多くの企業の中から、自社のニーズに合った取引先や協業先をスムーズに見つけられます。代表的なサービスは以下のとおりです。
- ミツモア:個人から法人まで、幅広い案件と専門業者をマッチングするプラットフォーム。料金やサービス内容、実績などを一覧で比較可能。
- PRONIアイミツ:企業間の取引に特化したマッチングサービス。専任コンシェルジュがヒアリングを行い、最適な企業を厳選して紹介。
ビジネスマッチングサービスは、効率的なパートナー探索ができる発注側と、新たな取引機会を得られる受注側の双方にメリットがあります。
経営課題や新規事業開発、組織改革など、専門的な知見を必要とする企業と、経験豊富なプロフェッショナルをつなぐサービスです。各分野の専門家やコンサルタントが登録し、企業のニーズに応じて案件単位でマッチングが行われます。
代表的なサービスは以下のとおりです。
- プロの副業:営業、人事採用、新規事業、マーケティングの各分野に強みを持つ即戦力のプロフェッショナルと企業をつなぐサービス。専任の担当者がフルサポート。
- フリーコンサルBiz:フリーランスのコンサルタントに特化。戦略・業務・ITなど幅広い領域の案件を掲載。
- HiPro Direct(ハイプロ ダイレクト):dodaを提供する人材サービス大手パーソルキャリアが運営。企業と副業を探しているプロ人材をつなげるマッチング型プラットフォーム。
企業は専門的な知見を迅速に活用でき、専門家はスキルを生かして多様な働き方を選択できます。
普段の生活で使えるマッチングサービス
普段の生活で使えるマッチングサービスは、ジャンルによってマッチングする対象が「人」や「物」などと異なります。
恋愛や結婚を目的に、価値観やライフスタイルの合う相手と出会えるサービスです。AIによる相性診断や趣味・性格分析など、データを活用したマッチングが主流となっています。
- Pairs(ペアーズ):国内最大級。会員数が多く、真剣な婚活と恋人探しの両方に対応。
- Omiai(オミアイ):本人確認の徹底やイエローカード付与など安全性を重視した、婚活向けサービス。
- タップル(tapple):趣味や関心をきっかけに気軽に出会える。若年層に人気。
- with(ウィズ):心理学的な相性診断が特徴
恋愛・婚活マッチングサービスは、「出会いの一つ」として定着しつつあり、価値観の一致や安心・安全な仕組みを通じて、より自分に合ったパートナー探しができます。
家事のサポートを求める家庭と、スキルを持つ家事代行スタッフをつなぐサービスです。掃除・料理・整理収納など、生活スタイルに合わせて依頼内容を柔軟に選べます。
代表的なサービスは以下のとおりです。
- タスカジ:家事代行スタッフを直接指名できる個人間マッチング型。1,500円から利用可能。
- CaSy(カジー):アプリで簡単予約。掃除や料理代行など短時間から利用可能。
- くらしのマーケット:掃除・引越し・修理など、暮らし全般のサービス提供者を比較・依頼できるサイト。
共働き世帯の増加に伴い、家事代行マッチングサービスの需要は拡大しています。利用者は家事の時間を他のことに充てられ、サービス提供者は得意を生かして働けるという双方にメリットがあります。
共通の趣味や興味を持つ人同士が出会い、学びや体験を共有できるサービスです。コミュニティ形成だけでなく、スキルアップのきっかけにもなります。
代表的なサービスは以下です。
- Meetup(ミートアップ):世界中で利用される交流イベントプラットフォーム。
- ストアカ(Schoo+α):都度払いでレッスンを体験・受講できる、日本最大級の習いごと検索サービス。
- ジモティー:地域コミュニティ型。不用品の売買・譲渡、趣味仲間の募集やイベント開催などにも活用可能。
趣味・イベントマッチングサービスは、同じ関心を持つ人との出会いを通じて、学びや交流の輪を広げる場として人気を集めています。
モノ、場所、スキルなどを共有することで、資産やリソースを有効活用するサービスです。 所有から共有への価値観の変化を背景に、さまざまな分野で拡大しています。
代表的なサービスは以下です。
- Airbnb(エアビーアンドビー):世界中の空き部屋を貸し借りできる民泊プラットフォーム。
- タイムズカー:法人・個人問わず利用できる時間制カーシェアリング。15分単位で利用可能。
- akippa(アキッパ):空き駐車場を時間単位で貸し借りできるシェアサービス。
高価なものを所有するのではなく、必要なときに必要なだけ使うというシェアリングエコノミーの広がりに伴い、さまざまな分野のサービスが注目されています。
マッチングサービスの主な収益方法
マッチングサービスが収益を得る方法として、掲載料や成功報酬などさまざまな手段があります。ここでは代表的な収益方法とサービスについて解説します。
会員費・掲載料
会員費や掲載料は、マッチングサービスに登録や利用する際に発生する費用のことです。たとえば恋人探しアプリの「with」では、有料会員になることでメッセージの送信数や表示機能の充実度が上がります。美容サロンサイトの「ホットペッパービューティー」は、掲載料に応じて、表示される順番が変動します。
広告収入
広告収入は、マッチングサービスに応じた広告を掲載することで、広告主から広告料を得る方法です。たとえば「不要なもの」と「必要な人」をマッチングさせる「ジモティー」では、サイトやアプリ内に広告を掲載して広告主から掲載料を得ます。その分ユーザーは無料でサービスを利用できるのが特徴です。
売買手数料
売買手数料とは、フリマアプリの「メルカリ」やオークションサービスの「ヤフオク」などで発生する費用のことです。商品が売れるまでは費用がかからず、購入の際に手数料が発生します。手数料は販売価格に応じて変動するケースと、一律に設定されている場合があります。
成功報酬
成功報酬は、基本的にサービスの利用時には費用がかからず、成果が発生したタイミングで費用を得る方法です。たとえばITやWeb業界をメインとした求人サイトの「Green」では、求人の掲載期間は費用がかからず、採用に成功した場合に成功報酬が払われます。
マッチングサービスを成功させるポイント

これからマッチングサービスを始めるなら、成功させるためのポイントを押さえてスタートさせましょう。以下より大切な5つのポイントを解説します。
ジャンル・市場を見極める
マッチングサービスを始めるうえで、ジャンル選定と市場規模の見極めは不可欠と言えるほど大切なポイントです。現在、マッチングサービス市場は活況を呈し、ジャンルによっては競合がひしめき合ったり大手企業が強かったりなどで、新規参入が難しい場合もあります。市場動向をよく観察し、独自の強みを活かせるジャンルを選ぶようにしましょう。
集客方法を検討しておく
競合より優れたサービスを開発しても、集客できなければ継続して運営することはできません。たとえばSEO対策やSNS運用、広告出稿など、サービス内容やターゲット層などに合わせて、より適切な集客方法を検討しましょう。口コミや紹介を促す方法も、手段の一つです。
使いやすいUI/UXを心がける
スマートフォンが普及した現代では、使いやすいUI/UXが重要です。ストレスなくサービスを利用できるよう、直感的で使いやすいUIや、優れたユーザー体験を提供できるようなデザインにすることでユーザーの満足度も向上していくでしょう。
コミュニティの形成支援を行う
マッチングサービス内で、ユーザー同士が交流しコミュニティを形成できるように支援することは、サービスへの満足度や継続利用につながります。たとえばオンラインイベントや交流会を企画、開催するのも一つの手です。
ユーザーからのフィードバックを積極的に
ユーザーからのフィードバックは、マッチングサービスを改善するための貴重な情報源です。たとえばアンケートやレビューを取り、ユーザーの声に耳を傾けて積極的にサービスに反映させましょう。ユーザーと共に、サービスを作り上げていく姿勢が大切です。
マッチングサイトにおけるAI導入の実態
近年は、マッチングサイトにおけるAI導入が進んでいます。その実態について、詳しくみていきましょう。
AI導入が進む背景
AI技術の普及に伴い、マッチングサービスの分野でもAI導入が加速しています。その背景には、マッチングの効率化と精度向上を求めるニーズの高まりがあります。
従来のマッチングサービスでは、年齢・地域・職種などの限定的な条件しか反映できませんでした。しかし、AIを導入することで、価値観や行動傾向、相性といった数値化しにくい要素まで考慮した、より精度の高いマッチングが可能になっています。
主なAI活用領域
マッチングサイトにおける主なAI活用領域は以下が挙げられます。
- マッチングスコアの算出
- レコメンド機能
- 問い合わせ対応の自動化
- 不正検知・安全性向上
AI技術の導入によって、マッチング精度の向上だけでなく、サービス全体の品質や信頼性が高まります。
AIを活用する代表的なマッチングサービス事例
AIを活用したマッチングサービスは年々増加しています。ここでは代表的な4つの事例を紹介します。
Wantedlyでは、対話型AI「ChatGPT」向けの機能拡張ツール「ChatGPTプラグイン」を提供しています。このプラグインを活用すると、ChatGPT上で、Wantedlyに掲載されている募集情報の中から、興味関心のある募集を簡単に探すことが可能です。AIとの対話を通じ、新しいキャリアの選択肢や想定外の企業との出会いも期待できます。
株式会社ビズリーチでは、生成AIを活用した「ビズリーチAI」をリリースしました。求める人材のイメージや企業サイトを入力するだけで、即戦力人材向けの求人原稿を最短30秒で自動生成してくれます。AIによる求人要件の言語化支援は、採用担当者の負担を軽減するとともに、組織全体の採用力向上にもつながっています。
スキマバイトサービス「タイミー」は、カスタマーサポートにおいて高精度AIチャットボット「KARAKURI chatbot」を導入しています。導入目的は、登録ワーカーや事業所の急増による、問い合わせ負担の軽減です。
サポート人員を増やすのではなく、AIによる自動対応の範囲を拡大することで、迅速かつ的確な対応が実現しました。カスタマーサポート業務の繁閑差に左右されることなく、安定したサポート体制を維持でき、ユーザー体験の向上にも貢献しています。
Airbnbは、AIスタートアップ企業「GamePlanner.AI」を買収し、より良い宿泊体験の実現を目指しています。現時点では部分的な AI機能の導入にとどまりますが、将来的にはユーザーの希望や嗜好に合わせて最適な宿泊先を提案する旅行コンシェルジュサービス機能の提供を見据えています。
マッチングサイトのビジネスモデルに関するよくある質問
最後に、マッチングサイトのビジネスモデルに関する、よくある質問を2つご紹介します。
マッチングサイトの作り方のおすすめは?
マッチングサイトを作るには「自社で制作する」か「外注する」2つの方法がありますが、自社にリソースがないのであれば外注して制作するのがおすすめです。なぜならマッチングサイトには洗練されたデザインだけでなく、持たせるべき機能が多く、より専門的なスキルが必要になるからです。
サービスを利用するユーザーと提供する側の双方の立場になって考え、それぞれにどのような機能があれば快適に使えるかを考えなければなりません。運用を始めてから後悔することのないように、経験豊富な制作会社やデザイナー、エンジニアに依頼することがおすすめです。
マッチングサイトビジネスで失敗するのはどんな時?
マッチングサイトビジネスでの失敗例として、以下のようなケースがあります。
- 機能がどこにあるかわからないなどサービスの使いにくさによってユーザーが離れる
- 集客がうまくいかないことによって登録者数が増えない
- 収益方法が適切ではないために運営費用が賄えない
- セキュリティ対策に不備があり、ユーザーからの信頼を失う
これらは、ユーザーニーズの理解不足や適切なビジネスモデルを構築できないことで起こりえます。また、マッチングがスムーズにいくようになるまでは、収益化にも時間がかかることも考えておくべきでしょう。
まとめ
本記事では、マッチングサービスにおけるビジネスモデルや具体的な収益方法、これからマッチングサービスを始める場合において成功させるためのポイントを5つご紹介しました。
すでに大きな市場を持ち、今後も成長を続けていくと考えられるマッチングサービス。新規参入して戦っていくには、専門知識やスキルが不可欠です。お悩みの際は、ぜひお気軽にご相談ください。

