
月間232万件の会話を自動処理し年間4000万ドルの利益改善を見込んだクラーナのAIアシスタントは、その後CEO自らが「コスト最優先が品質低下を招いた」と認め、人による対応を呼び戻すハイブリッド運用へと舵を切った。海外の先行事例から、AI活用を検討する企業が学べる設計上の論点を確認する。
- 2024年2月の開始時点で月232万件のチャットに対応し、フルタイム社員700人相当の業務量をこなしたと発表
- 解決までの時間を平均11分から2分未満に短縮し、問い合わせの再発率を25%削減、2024年に4000万ドルの利益改善を見込むとした
- 2025年以降はコスト最優先による品質低下をCEOが認め、人による対応を再拡充。2026年時点ではAIと人を明確に線引きするハイブリッド設計へ進化している
WHATクラーナのAI活用の経緯
スウェーデン発フィンテックのクラーナは2024年2月、OpenAIの技術を用いたAIカスタマーサポートアシスタントを世界23市場・35以上の言語で稼働させた。導入から1カ月で232万件の会話に対応し、全チャットの3分の2を自動処理したという発表は、生成AI活用の象徴的な事例として世界中で取り上げられた。
クラーナのAIアシスタントは稼働開始1カ月で232万件の会話に対応し、全カスタマーサービスチャットの3分の2を処理。フルタイム社員700人分の業務量に相当し、対応時間は従来の11分から2分未満に短縮、問い合わせの再発率も25%減少したと公表された。2024年には4000万ドルの利益改善効果が見込まれるとした。
出典: (クラーナ公式発表をもとにエムズ編集部が整理)
www.klarna.com/international/press/klarna-ai-assistant-handl
ところが華々しい初速の裏で、CEOのセバスチャン・シェミアトコウスキ氏は後に「コストを評価の最優先事項にしすぎた結果、対応品質が下がった」と認めることになる。2025年には人材採用を再開し、2026年時点ではAIと人の役割分担を明確に設計するハイブリッド運用へと方針を転換している。
POINTSポイントで見る導入の教訓
クラーナの3年間の経緯から、AI導入を検討する企業が押さえておきたいポイントを整理する。
- 自動化の成果は本物だった:導入初月の232万件対応・700人相当の業務量・利益改善4000万ドルという数字は、生成AIが実務コストを動かせることを示した先行事例と言える。
- コスト最優先が招いたほころび:自動化率や工数削減だけを追い求めると顧客体験の質が犠牲になりうることを、クラーナ自身がCEOの発言として認めている。
- 2026年のハイブリッド設計:現在のクラーナはAIに任せる業務範囲を絞り込み、複雑な相談や感情的な対応が必要な場面では人につなぐ設計を明確化している。単純な自動化率の追求から「解決の質」重視へと評価軸を移している。
INSIGHTエムズ的インサイト
クラーナの事例が示すのは、AI活用の成果は初速の数字だけでは測れないという当たり前だが見落とされがちな事実である。過ぎたるは猶及ばざるが如しというが、自動化率という単一指標を追いすぎた反省から、解決の質と役割分担を再設計したプロセスにこそ学ぶ価値があるわけです。
エムズのAIシステム構築は生成AI小規模導入から対応しており、まずは対象業務を絞り込んでスコープを定義するという、クラーナが2026年に強調している設計思想と同じ考え方を採っています。既存業務のどこにAIを当てるかを見極める段階では既存ビジネスのAI活用の切り口が役立ちますし、入口として問い合わせ内容を仕分ける仕組みはAI診断ツール構築の発想にも通じます。構築実績では業種ごとの運用改善事例も積み重ねているところです。
FAQよくある質問
出典・参考
- Klarna International「Klarna AI assistant handles two-thirds of customer service chats in its first month」 https://www.klarna.com/international/press/klarna-ai-assistant-handles-two-thirds-of-customer-service-chats-in-its-first-month/
- CX Today「Klarna's AI Customer Service Roadmap: Why Human Support Still Matters」 https://www.cxtoday.com/customer-engagement-journey-orchestration/klarna-ai-customer-service/
※本記事は上記の公開情報をもとに、株式会社エムズ編集部が独自に整理・考察したものです。内容は執筆時点(2026-09-06)の情報です。考察部分は当社の見解であり、特定の製品・導入を推奨するものではありません。
AI活用は"自動化率"より
設計次第で成果が変わる。
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